
小規模企業共済とiDeCo、個人事業主はどっちから? — 節税額は同じ、違いは『引き出しやすさ』
『節税になるって聞くけど、小規模企業共済とiDeCo、個人事業主はどっちから始めればいいの?』——よくいただく質問です。どちらも掛金がまるごと所得控除になる、いわば国が用意した『節税しながら将来に備える箱』。だから節税の効きめだけを見ると、実は横並びで甲乙つけにくいんです。違いは箱の中身ではなく、『フタの開けやすさ』。片方はいざという時に開けやすく、もう片方は老後まで固く閉じています。この記事では、二つの制度の性格の違い、順番を考える物差し、併用したときの上限、そして今日できる『去年の所得控除を一つ確認する』一歩まで、順にお見せします。なお、特定の商品や配分をすすめるのではなく、判断の物差しをお渡しします。
まず結論
小規模企業共済とiDeCoは、どちらも掛金が全額所得控除になり、併用もできます。節税の効きめはほぼ横並びで、違いは『お金の引き出しやすさ』です。共済は廃業時などに受け取れて比較的動かしやすく、iDeCoは原則60歳まで引き出せない代わりに自分で運用して老後に備えます。だから順番は、手元資金とリスクの取り方で考えましょう。
そもそも、なぜ『どっちが得』ではなく『順番』で考えるの?
どちらも掛金の全額が『小規模企業共済等掛金控除』として所得から引かれるので、同じ額を積むなら節税の効きめはほぼ同じです。つまり『どっちが得か』では差がつきにくい。差が出るのは、預けたお金を『いつ引き出せるか』と『増える可能性とリスク』のほう。だから比べるべきは損得より、お金の性格と積む順番なんです。
『どっちが節税になりますか?』と聞かれることが多いのですが、実はこの問いだと差がつきにくいんです。理由は、二つとも同じ税制のしくみに乗っているから。
小規模企業共済の掛金も、iDeCoの掛金も、確定申告では同じ『小規模企業共済等掛金控除』という枠で、支払った全額が所得から差し引かれます。国税庁の案内でも、この控除の対象として両方が並んで挙げられています。
だから、同じ金額を積むなら、節税で浮く税金の額はほぼ同じ。ここで甲乙をつけようとしても、決め手になりません。
本当に違うのは、預けたあとのお金の『性格』です。すぐ引き出せるのか、老後まで動かせないのか。増える可能性がある代わりにリスクを負うのか、それとも安定しているのか。この違いを知ると、『どっちが得』ではなく『自分はどっちから積むべきか』という順番の話に変わります。
図解
比べる軸は、損得より『引き出し方』
二つとも掛金は全額所得控除。節税だけでは差がつきません。
小規模企業共済は、どんな性格のお金?
ひとことで言うと、個人事業主の『退職金づくり』の箱です。掛金は月1,000円から70,000円まで、500円きざみで選べて、全額が所得控除。廃業や引退のときに共済金として受け取ります。しかも掛金の範囲でお金を借りられる貸付制度があるので、いざという時にも比較的動かしやすいのが特徴です。
小規模企業共済は、中小機構という国の機関が運営する、個人事業主や小さな会社の経営者のための制度です。会社員でいう退職金を、自分で少しずつ積み立てておくイメージ、と考えるとわかりやすいです。
掛金は月1,000円から70,000円までの間で、500円きざみで自由に決められます。あとから増やしたり減らしたりもでき、支払った掛金は全額が所得控除の対象になります。
受け取るのは、事業をやめたときや引退するとき。積み立てた期間に応じた共済金が戻ってきます。長く続けるほど有利になるよう設計されています。
この制度の大きな安心材料が、貸付制度です。積み立てた掛金の範囲内で、事業資金などを借りられるしくみがあります。つまり、老後まで一切さわれないお金ではなく、いざという時には手をつけられる余地がある。ここが、次に見るiDeCoとの一番の違いになります。
iDeCoは、どんな性格のお金?
iDeCoは、自分で運用する私的年金です。個人事業主(第1号被保険者)は月68,000円まで積め、掛金は全額所得控除。定期預金・保険・投資信託から自分で選ぶので値動きのリスクがある一方、運用で増えた利益には税金がかかりません。ただし原則60歳まで引き出せず、老後資金にしっかり固定されます。
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、公的年金に自分で上乗せする、私的年金のしくみです。共済との一番の違いは、『自分で運用する』こと。
用意された定期預金・保険・投資信託といった商品の中から、自分で選んで掛金を運用します。投資信託を選べば値動きがあり、増えることもあれば減ることもある。この点は、掛金が守られる共済とは性格が異なります。
個人事業主(国民年金の第1号被保険者)の場合、掛金は月68,000円まで(国民年金基金などと合わせた上限)。掛金は全額が所得控除になり、さらに運用で出た利益にも税金がかからない、という手厚い優遇があります。
その代わり、原則60歳になるまで引き出せません。途中で『生活費が足りないから少し戻したい』はできない設計です。裏を返せば、老後まで確実に取っておける。使ってしまう心配がないぶん、老後資金としては強い箱だといえます。
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順番を考えるとき、何を物差しにすればいい?
物差しは主に3つあります。①手元の余裕(急な出費に備えるお金があるか)②お金を使う時期(近い将来か、老後か)③値動きをどこまで受け入れられるか。引き出しやすさを大事にするなら共済寄り、老後まで動かさない前提で運用に回すならiDeCo寄り、という考え方ができます。正解は人それぞれです。
どちらから積むか。ここは損得ではなく、自分の状況に合わせて考える場面です。物差しを3つに分けると、判断しやすくなります。
一つ目は、手元の余裕です。事業には、急な出費や売上の谷がつきもの。生活費の数か月分など、すぐ使えるお金がまだ薄いうちは、60歳まで動かせないお金を厚くしすぎると苦しくなります。
二つ目は、そのお金をいつ使う想定か。老後まで手をつけない前提のお金ならiDeCoの固さが向きますし、事業の引退時期に合わせて受け取りたいなら共済がなじみます。三つ目は、値動きをどこまで受け入れられるか。減る可能性も含めて運用したいのか、掛金が守られる安心を取りたいのか、です。
この3つを自分にあてはめると、『まずは引き出しやすい共済から』『老後資金を運用で育てたいからiDeCoを優先』といった順番が、自然と見えてきます。どちらが正しいという話ではなく、今の自分にどちらの性格が合うか。それが順番の答えです。
図解
順番を決める3つの物差し
どちらから積むかは、自分の状況に合わせて決めます。
- 01①手元の余裕急な出費に備えるお金が、まだ薄くないか
- 02②使う時期近い将来に使うか、老後まで置いておくか
- 03③リスク許容値動きを受け入れるか、掛金が守られる安心を取るか
両方はできる? 併用したときの上限は?
併用できます。どちらの掛金も同じ『小規模企業共済等掛金控除』の対象で、二つ合わせると所得から引ける枠が大きくなります。上限は共済が月70,000円、iDeCoが月68,000円(第1号)。2026年12月の改正では、自営業者のiDeCo枠が月75,000円へ広がる予定です(反映は2027年1月)。無理せず小さく始めましょう。
『どちらか一方しか選べないの?』と思われがちですが、二つは併用できます。片方に決める必要はなく、両方に少しずつ、という積み方もできます。
しかも、どちらの掛金も同じ『小規模企業共済等掛金控除』で全額が所得から引かれます。だから両方に積めば、そのぶん控除できる枠が積み上がっていきます。上限は、共済が月70,000円、iDeCoが個人事業主で月68,000円(国民年金基金などとの合算)です。
この枠は、今後さらに広がる予定です。2026年12月の制度改正で、自営業者のiDeCoの上限は月75,000円へ引き上げられます(掛金への初回反映は2027年1月ぶんから)。あわせて、加入できる年齢も70歳未満まで広がります。
ただし、枠が大きいからと目いっぱい積むのが正解ではありません。共済もiDeCoも、いったん決めた掛金は生活の固定費になります。事業の資金繰りや暮らしを圧迫しない範囲で、まずは小さく始めて、余裕が出たら増やす。これが長く続けるコツです。
図解
共済とiDeCo、性格と上限の違い
併用もできます。それぞれに毎月の枠があります。
まず今日、何から始めればいい?
今日やるのは一つだけ。『去年の所得控除を一つ確認する』ことです。確定申告書やe-Taxの控えを開き、『小規模企業共済等掛金控除』の欄に金額が入っているか見てみましょう。ゼロなら、まだこの箱を使っていないサイン。加入も金額決めも今日はしなくて大丈夫。まずは自分の現在地を、一つ確かめるところからです。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。最後に、今日できる一歩を一つだけ。
『去年の所得控除を一つ確認する』。これだけです。手元にある確定申告書の控えや、e-Taxのデータを開いてみてください。所得控除の欄に、『小規模企業共済等掛金控除』という項目があります。
そこに金額が入っていれば、あなたはもうこの箱を使っています。ゼロや空欄なら、まだ使っていないというサイン。それだけで、『自分は今どのくらい節税の余地を残しているか』の現在地がわかります。
加入するかどうか、いくら積むかは、今日決めなくて大丈夫。まずは現在地を一つ確かめる。そこから、共済とiDeCoのどちらの性格が自分に合うかを、落ち着いて考えていけばいいんです。全部を今日やろうとしないのが、続けるコツです。
図解
今日は控除の欄を1つ見るだけ
加入も金額決めも今日はしなくて大丈夫。
- 01開く確定申告書の控えか、e-Taxのデータを開く
- 02探す『小規模企業共済等掛金控除』の欄を見る
- 03確かめる金額が入っているか、ゼロか。自分の現在地を知る
③ 道具
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出典
参考にした情報源
この記事の内容は、次の一次情報・公式資料をもとにしています。気になる点はご自身でも確かめられます。
- iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)公的機関iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)の制度
iDeCoは自分で運用商品を選んで掛金を運用する私的年金で、原則60歳になるまで
ideco-koushiki.jp
- 楽天証券公式ドキュメントiDeCoの2026年12月制度改正(拠出限度額・加入可能年齢)
2026年12月の制度改正で第1号被保険者(自営業者)のiDeCo拠出限度額が月
dc.rakuten-sec.co.jp
著者プロフィール

MANTA / 岩崎 正宏
関西の飲食企業で広報・マーケを担当。映像制作・写真・SNS運用・AI活用の実務
中堅飲食グループの広報・マーケをしながら、UNLEASH TALENT で映像制作とデザインを手がけています。大事にしているのは「伝わるか」。見た目のこだわりも、AIを使った効率化も、ぜんぶ"伝える"ための道具です。YouTube(@MantaTV)、長福寺の次期住職、4歳の娘の父——いろんな顔で、現場で本当に効いたことだけを書いています。


