
フリーランスの料金の決め方 — 時給換算のワナと『原価+価値』の組み立て方
『自分の見積り、もしかして安すぎる?』——フリーランスや個人事業主の方から、よくいただく相談です。多くの場合、原因は料金を『時給いくら』だけで考えていること。でも会社員時代の時給には、実は社会保険の会社負担や、有給、机やパソコンといった設備、仕事を取ってくる営業の手間まで、見えないかたちで乗っていました。独立するとそれが全部、自分の単価に含めるべきコストに変わります。この記事では、時給換算だけだと何が消えてしまうのか、『原価+価値』でどう料金を組み立てるのか、そして今日できる『直近1案件の実働時間を書き出す』一歩まで、順にお見せします。
まず結論
フリーランスの料金を『時給換算』だけで決めると、見積りや打ち合わせ、修正、税金や保険といった稼働に乗らないコストが抜け落ちます。そこで、実働に乗らない時間と間接費を足した『原価』に、成果の『価値』を上乗せして組み立てます。まずは直近の1案件で、実際にかかった時間を書き出すところからです。
なぜ『時給いくら』で決めると、料金が安くなりがちなの?
会社員時代の時給には、社会保険料の会社負担や有給、机やパソコンといった設備、仕事を取ってくる営業まで、見えないかたちで含まれていました。フリーランスはこれらを全部、自分で用意します。なのに時給だけをそのまま持ち込むと、その『見えないおまけ』のぶんが、まるごと料金から抜け落ちてしまうんです。
『時給1,000円のアルバイト』と『時給1,000円で請けるフリーランス』。同じ数字でも、手元に残るものはまるで違います。
会社員の給料には、実は本人に見えないコストがたくさん含まれています。社会保険料は勤め先が半分を負担し、体調を崩しても有給で守られ、机やパソコン、ソフトは会社もち。仕事も営業担当が取ってきてくれます。
フリーランスになると、この『見えないおまけ』が一つもついてきません。保険も設備も営業も、全部自分もち。つまり同じ手取りを得るだけでも、会社員時代より高い単価が必要なんです。
ところが多くの人が、独立後も会社員時代の時給感覚をそのまま持ち込んでしまう。すると、おまけのぶんが料金から抜け落ち、『働いているのに手元に残らない』状態になってしまいます。
図解
会社員の時給 vs フリーの時給
同じ『時給1000円』でも、中身はまるで違います。
時給換算だと、具体的に何が『消える』の?
大きく3つです。1つ目は見積り・打ち合わせ・修正・請求など、直接お金にならないけれど必ず発生する時間。2つ目は国民年金や国民健康保険、税金、経費といった自己負担のコスト。3つ目はあなたの経験や成果がもたらす『価値』。時給だけを見ていると、この3つがまるごと料金の外にこぼれ落ちてしまいます。
時給換算のいちばんの弱点は、『作業していない時間』と『後から出ていくお金』が見えなくなることです。こぼれ落ちるものを、3つに分けて整理してみます。
1つ目は、お金にならないけれど必ず発生する時間。見積書づくり、打ち合わせ、メールのやりとり、修正対応、請求書の発行。これらは1円も請求できないのに、確実に時間を食います。作業時間だけを時給換算すると、この部分がまるごとタダ働きになります。
2つ目は、自己負担のコストです。会社員なら勤め先が半分負担していた社会保険料も、フリーランスは全額自分もち。国民年金や国民健康保険、所得税・住民税、それに仕事の経費まで、すべて単価の中から払う必要があります。
3つ目は、あなたの『価値』です。同じ作業でも、経験の厚みや仕上がりの速さ、任せられる安心感で、相手が得るものは変わります。時給という物差しは、この価値をまったく映してくれません。
値段以前に、知っておくべき『取引のルール』はある?
あります。2024年11月に始まったフリーランス法で、発注側はあなたに『報酬額や支払期日を含む取引条件』を書面などで示す義務を負いました。相場より著しく低い金額を一方的に押しつける『買いたたき』も禁止です。値段を決める前に、条件を口約束で済ませない。これが、自分を守るための土台になります。
料金を組み立てる前に、土台となる『取引のルール』を押さえておきましょう。2024年11月から、フリーランスと発注事業者の取引を対象にした新しい法律(フリーランス法)が始まっています。
この法律では、発注側は業務を委託したとき、報酬額や支払期日、業務の内容といった取引条件を、書面や電子メールなどで直ちに示すことが義務づけられました。『あとで決めよう』『だいたいこのくらいで』という口約束のままの発注は、本来あってはいけないものになったのです。
報酬の支払期日にもルールがあります。原則として、成果物を受け取った日から数えて60日以内の、できるだけ短い期間で支払わなければなりません。『支払いは数か月先』といった引き延ばしは認められません。
さらに、通常の対価より著しく低い報酬を一方的に定める『買いたたき』も禁止されています。安く見積もりすぎない、条件を書面でもらう。これは、あなた自身を守るための正当な行動です。
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では、料金はどう組み立てればいい?
『原価+価値』の順で積み上げます。まず原価として、実際の作業時間に、見積りや修正といった稼働に乗らない時間を足す。次に税金・保険・経費などの間接費を上乗せする。最後に、あなたの経験や成果がもたらす価値を加える。この3段で考えると、時給換算では見えなかった『本当に必要な単価』が姿を現します。
こぼれ落ちるものが分かれば、あとは順番に積み上げるだけです。おすすめは『原価+価値』の3段構成です。
1段目は、素の作業時間。2段目は、そこに『稼働に乗らない時間』を足します。見積り、打ち合わせ、修正、請求——これらを含めた合計時間で、初めて実態に近づきます。目安として、作業時間の2〜3割増しで見ておくと、大きくは外しません。
3段目が、間接費と価値です。国民年金・国民健康保険・税金・経費といった自己負担を単価に織り込み、その上に、あなたの経験や仕上がりの速さ、安心感といった『価値』を乗せます。ここが、単なるコスト計算と値決めの分かれ目です。
この順で組み立てると、『時給いくら』では絶対に出てこなかった金額が見えてきます。それが、あなたが本当に受け取るべき料金の下限だと考えてください。
図解
料金を積み上げる3段
原価を土台に、価値を上乗せして決めます。
- 011段 原価実働に、見積り・打合せ・修正・請求の時間を足す
- 022段 間接費税・保険・経費など自己負担のコストを単価に織り込む
- 033段 価値経験・仕上がりの速さ・安心感を上乗せする
単価を上げないと、実際どうなるの?
働く時間だけが増えていきます。フリーランス白書2025では、月に140時間以上働く人が全体の約47%を占め、収入はおおむね稼働時間に比例していました。単価が低いままだと、収入を増やす方法が『もっと長く働く』しか残りません。値決めを見直すことは、時間で消耗しないための、いちばん効く一手なんです。
単価を低いままにしておくと、何が起きるか。答えははっきりしています。働く時間だけが、どんどん増えていきます。
フリーランス協会の『フリーランス白書2025』によると、月に140時間以上働く人が全体の約47%にのぼりました。そして収入は、おおむね稼働時間に比例する傾向が見られました。つまり多くの人が、『たくさん働けば、そのぶん稼げる』という時間依存の状態にあるということです。
この状態では、収入を増やす方法が『もっと長く働く』しかありません。でも1日は24時間、体力にも限りがあります。時間を売る働き方は、どこかで必ず頭打ちになります。
だからこそ、単価を見直すことには大きな意味があります。同じ時間でも受け取る額が増えれば、働きづめから抜け出す余地が生まれる。値決めは、時間で消耗しないための、いちばん効く一手なんです。
まず今日、何から始めればいい?
今日やるのは一つだけ。『直近に終わった1件の、実際にかかった時間を書き出す』ことです。作業時間だけでなく、見積り、打ち合わせ、メール、修正、請求まで全部。合計時間で受け取った報酬を割ると、あなたの『本当の時給』が見えます。値上げも交渉も、まだしなくて大丈夫。まずは現在地を、数字で一つ確かめましょう。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。最後に、今日できる一歩を一つだけ。
『直近に終わった1件の、実際にかかった時間を書き出す』。これだけです。作業そのものの時間はもちろん、見積書づくり、打ち合わせ、メールのやりとり、修正、請求書の発行まで、その案件のために動いた時間を全部書き出してみてください。
その合計時間で、実際に受け取った報酬を割ってみます。すると、作業時間だけで計算していたときとは違う、あなたの『本当の時給』が姿を現します。思ったより低くて驚くかもしれません。でも、それが値決めを見直す出発点になります。
値上げをするか、交渉するかは、今日決めなくて大丈夫。まずは現在地を、数字で一つ確かめる。そこから、次の見積りをどう組み立てるかを、落ち着いて考えていけばいいんです。
図解
今日の一歩
5分で『本当の時給』が見えてきます。
- 011 案件を選ぶ直近に終わった仕事を1つ思い浮かべる
- 022 時間を書き出す作業・見積り・打合せ・修正・請求まで全部
- 033 報酬を割る合計時間で割ると『本当の時給』が見える
③ 道具
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出典
参考にした情報源
この記事の内容は、次の一次情報・公式資料をもとにしています。気になる点はご自身でも確かめられます。
- プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会公式ドキュメントフリーランス白書2025
回答者約1,000名の調査。月140時間以上稼働する人が約47%を占め、年収がお
blog.freelance-jp.org
著者プロフィール

MANTA / 岩崎 正宏
関西の飲食企業で広報・マーケを担当。映像制作・写真・SNS運用・AI活用の実務
中堅飲食グループの広報・マーケをしながら、UNLEASH TALENT で映像制作とデザインを手がけています。大事にしているのは「伝わるか」。見た目のこだわりも、AIを使った効率化も、ぜんぶ"伝える"ための道具です。YouTube(@MantaTV)、長福寺の次期住職、4歳の娘の父——いろんな顔で、現場で本当に効いたことだけを書いています。
